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【読書】古典部シリーズ「いまさら翼といわれても」感想【米澤穂信】

こんにちは、くらくです。

 

以前から「アニメ氷菓の記事をあげたい」といっていたのですが、なかなか時間が取れずかけていませんでした。

今回は、その前に原作について少し触れていこうということで、氷菓の原作「古典部シリーズ」の最新刊(2020/02/22時点)の「いまさら翼といわれても」の感想記事となります。

 

 

 

 

 

「いまさら翼といわれても」とは

 

 

本書は

  • 「箱の中の欠落」
  • 「鏡には映らない」
  • 「連峰は晴れているか」
  • 「わたしたちの伝説の一冊」
  • 「長い休日」
  • 「いまさら翼と言われても」

の6編からなる短編集です。

 

古典部シリーズとしては6作目にあたり、前作「ふたりの距離の概算」と同じく主人公の折木が2年生になってからのお話がほとんどです。

 

連峰は晴れているか」以外は映像化されていませんが、古典部全員のキャラクター像を深掘りをする内容となっていて、非常に読み応えがありました。ほうたるかまやかが好きな方は絶対に読んだ方が良いです。

 

本記事では、映像化されている「連峰は晴れているか」以外の各章のあらすじに触れつつ、アニメは見たけど原作は読んでない!という方に向けて、おすすめポイントをまとめて、読むきっかけとなればと思います。

 

 

「箱の中の欠落」

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あらすじ

生徒会選挙のお話。奉太郎と里志が主な登場人物です。

奉太郎たちが通う神山高校で行われた生徒会選挙において、投票結果がおかしなことになっていた。それに関して里志が奉太郎に相談することがメインのお話です。

 

 

これぞ古典部シリーズというような日常に潜む謎を解いていくお話。奉太郎と里志の気のおけない間柄で生まれる絡みが面白い。 

 肝心のミステリ要素は、「誰が」「何のために」という要素を排除し、単純に「どうやって」という部分に注力し短くまとめていて、短編として読みやすかったです。

 

 

 

「鏡には映らない」

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あらすじ 

奉太郎と摩耶花が中学時代に行った卒業制作にまつわるお話。

奉太郎が「なぜ卒業制作で手抜きをしたのか」という謎について、摩耶花が探偵役として活躍します。

 

古典部として一年以上共に過ごしてきた摩耶花の奉太郎に対する感情の変化が感じられるお話。

 

入学当初の摩耶花であれば、こんな風に動かなかったんじゃないかなぁと、摩耶花の成長が感じられる点が良いですね。

摩耶花の中で、奉太郎に対して微かな信頼が生まれているところが尊い

この短編は謎解きやその過程が面白いんですが、やはりそこは古典部シリーズ。一味違う青春小説の趣を感じさせてくれます。

 

 

 

 

 

「私たちの伝説の一冊」

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あらすじ

摩耶花が主役のお話。古典部ではなく、漫研がメインのお話です。

漫研は、漫画を書きたい派と読んで楽しむ派で対立が起こっており、その対立に関して摩耶花が何かと奔走します。

 

 

前篇に続いて摩耶花がメインのお話。アニメでも描かれた文化祭から続く漫研内の対立が主軸に置かれています。

少しネタバレになりますが、「クドリャフカの順番」やアニメでも登場した河内先輩(アニメではナコルルのコスプレをしていた人です)が登場します。摩耶花が好きと言っていた同人誌「ボディトーク」の制作に関わった人ですね。

里志の成長が感じられる描写が入っているのも良いです。里志と摩耶花の関係が良好に進んでいるんだなぁと感じられて微笑ましかったです。

あとは奉太郎が書いた走れメロスの感想文。奉太郎らしいなぁと思えるような文でありながら、物語にもリンクしてくるところが面白い。

 

夢について今一度考えさせられる、そんなお話でした。

 

 

「長い休日」

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あらすじ

奉太郎の過去のお話です。奉太郎が「なぜ省エネ主義になったのか」という点について深掘りするエピソードです。

やらなくてもいいことなら、やらない。やらなければいけないことなら手短に」とは、奉太郎のモットーではありますが、なぜそれをいうに至ったのか、えるに語る形で明かされていきます。

 

「今日は調子が良い」と最初に言っていた奉太郎が最後に「今日は調子が悪い」というところが粋。

奉太郎の人物像に大きく関わるエピソードであるがゆえに、アニメ勢の方々がこれを読んでいない、というのがとても勿体無い!と感じるお話でした。

奉太郎が省エネ主義に至る過程を知れたのも面白かったですが、えると奉太郎の絡みが実に尊い

タイトルである「長い休日」。あることをきっかけに長い休日に入ることに決めた奉太郎でしたが、最後に姉である供恵はこう言います。

 

でもね、いつか誰かが休日を終わらせるだろう

 

奉太郎の長い休暇を終えるのは誰なのか。そして、いつ終わるのか。

私的にはこのエピソードが描かれた時点でその答えは出ている気がします。

 

 

「いまさら翼といわれても」

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あらすじ

古典部全員に焦点が当たるお話。合唱祭においてソロパート任されたえる。しかしその会場にえるの姿はなく、古典部全員で探すことになります。

 

表題作であり、一番米澤穂信っぽい作品でした。読後感がね…。

いまさら翼といわれても」とはどういう意味か。読み進めていくうちに薄々と感づいてきて、劇中でえるが口に出したとき、はっとさせられました。

本当にほろ苦い。だけどこれぞ古典部シリーズといえるような短編でした。

アニメ版最終話として映像化もされている「遠回りする雛」から繋がるお話であり、家を継ぐことを受け入れていたえるの心情の変化を描いています。

この話を読んで一番思ったことは、「早く続きが読みたい!

 

 

 

 さいごに

最近は読書といっても技術書か漫画ばかりだったため、娯楽として小説を読んだのは結構久しぶりでした。移動中にちょっとずつ読んでようやく読了しました。

ちょうどアニメの再放送もやっているということで、良いタイミングで読めてよかったなという感じです。

京アニ製作で第二期が見れると嬉しいです。

 

特に後半の3篇が面白く、アニメ勢の方にも読んでほしい内容でした。最後の終わり方的にも続きはいずれ出ることでしょうし、原作者の方も奉太郎の卒業までは書くと何かでおっしゃっていたので、とにかく続きが待ち遠しいです。

古典部メンバーの行く末が「私、気になります!